花王株式会社(以下、花王)は化粧品や石鹸、洗剤などが主力商品で、これらはやはりパームオイルを界面活性剤の原料として活用している。そのため、パーム農園のサステナビリティは、事業の大きなインパクトとなる。
サプライチェーンにパーム農園を抱える企業は、森林の違法伐採や、労働者の人権に対するモニタリングが求められ、それらに対する取り組みを開示しているケースが多い。しかし花王は、パーム農園に被害をもたらしているガノデルマ病害の解決に向けて、リモートセンシング技術の活用に取り組んでおり、それについてホームページで開示している。
花王は2022年11月、衛星データビジネスの株式会社ポーラスター・スペースと業務提携し、ガノデルマ病害を早期発見するためのモニタリング技術の確立をめざして協働で実証を開始することを発表した。
ホームページに開示された情報によると、ガノデルマ病というのは、パーム油が採れるアブラヤシの木を枯らす病原体だ。感染した木をなるべく早く見つけ、感染が広がらないよう伐採する。その為には人が見て回るしかないが、大きな農園だと人件費の負担や感染を見逃すといったことが課題となっているそうだ。そこで花王は、リモートセンシング技術に優れたポーラスター・スペース社と、遠隔地から監視するシステムの構築を目指している。
ポーラスター・スペース社は、“宇宙から地上までのシームレスな観測データソリューション”を強みとする北海道大学発のベンチャー企業だ。超小型衛星によるリモートセンシング技術を活かし、農業や漁業、資源・エネルギー、防災などで衛星データを基に、問題解決型サービスの提供を目指している。
しかし花王のホームページによると、今回の協働実証作業では、そのセンサーを小型衛星ではなく、ドローンに載せて測定するようだ。ドローンに搭載した特殊なセンサーカメラで収録する分光情報を分析し、目視では困難な初期のガノデルマ症状が判断できるかを実証する。また同時にサプライチェーンのモニタリングも可能か実証実験を行う予定だそうだ。
今回ドローンを使用するのは限られた範囲で行う実証実験だからだろうか。ドローンと小型衛星は、その観測範囲や測定する際の地表からの距離、そして観測したい地点にどこまで近づけるか、といった点において、それぞれ対応できることが異なる。花王のホームページによると、技術が確立したらパーム農園へのサービス提供を検討すると記載されている。そうなれば広範囲の測定を行うため、同じ測定装置を低軌道の小型衛星に搭載するのかもしれない。花王とポーラスター・スペース社の実証の成果に期待したい。